« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »

2009年10月

2009年10月26日 (月)

ニュートンが考えた光の直進

 17世紀末に、ニュートンは光の正体は弾丸のような粒子であるという「粒子説」を唱えました。同じ頃、ホイヘンスは光の正体は波であるいう「波動説」を唱えました。

 ニュートンは光源から放射される光には実体があり、光が波だとすると、光が直進することを説明できないと主張しました。

 これに対して、ホイヘンスは、光が直進するのは、たくさんの小さな球面波が重なり平面波となって進むからだと説明しました。彼は光の反射や屈折の法則も波動で説明できることを示し、光が波であると主張しました。

 ホイヘンスの説明はしっかりしていましたが、光の現象が何とか粒子説で説明できたことや、ニュートンの権威もあり、当時は光の粒子説が有力となりました。

 ニュートンの時代には光は直進するというのが実験事実です。しかし、ニュートンが言うように光が弾丸のような粒子であれば、光は重力に引かれて落下しながら進むことになります。この事実と異なる部分はどのように考えたら良いでしょうか。

今、初速V0の物体が水平に飛び出したときの物体の運動(水平投射)は次のようになります。空気抵抗はないと考えましょう。

Newton1

秒速30万キロメートルの光の粒子が x だけ進んだときに y がどれぐらいになるかを求めてみましょう。

2つの式から

y = 1/2 g (x/V0)2

となります。x を1 km (1000 m)としてみます。

y = (1/2 )(9.81)(1000/300000000)2

y=5.45×10-11

これは54.5 pm(ピコメートル:1 pm=1兆分の1メートル)です。

水素原子の大きさはだいたい100 pmですから、この値は水素原子の半径ぐらいとうことになります。

つまり、光はものすごく速いので1 km進んでも水素原子の半径ほどしか落下しないと言えるわけです。ニュートンの時代には、光の弾丸がわずかに落下するかしないかを観測することはできませんから、結局のところ重力の影響は考えなくても良いということになります。

ニュートンの主張は「光は弾丸のような粒子であっても速度が大きいので直進するのだ」ということになります。

人気ブログランキングへ

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年10月20日 (火)

光があるところに色がある 色が見える仕組み(1)

 青い海・緑の木々・赤い屋根・・・光に照らし出されたところには、様々な色があふれています。

Hawaii

 ギリシャの哲学者アリストテレスは「色は光と闇、白と黒の間から生じる」、すなわち、すべての色は白と黒の混合の割合で作られると考えました。これをアリストテレスの変改説または変化説といいます。

アリストテレスの変化説については、光と色との別館の「光と色と THE NEXT」の記事「アリストテレスの変改説(変化説)-白と黒のはざまに(1)」を参照してください。

 アリストテレスは、光と色との間に関係があることは気がついていたようですが、色の本質を明らかにするまでには至りませんでした。ア

1

 色がどうして生じるのかを科学的に明らかにしたのはイギリスの物理学者アイザック・ニュートンです。ニュートンは1666年に無色の太陽光をプリズムに通すと、光が分散して赤橙黄緑青藍紫の7色の光の帯が現れる現象を実験で示しました。そして、プリズムで分散した光の帯をレンズともうひとつのプリズムで集めると元の太陽光と同じ無色の光に戻ること、光の帯から異なる任意の2色の光を取りだして混合すると別の色が現れることを示しました。

Prism3

 ニュートンはこれらの実験結果から、無色の太陽光は様々な色の光が集まったものであることを突き止めました。そして、光そのものには色はついていないが、光は人間の視覚に色の感覚を起こす能力があると結論づけました。

 ニュートンのこの実験は光と色の本質をさぐる重要な手がかりとなりましたが、ニュートン自身は色の本質を突き止めることができませんでした。それはニュートンが光を弾丸のように飛ぶ粒子と考えたからです。ニュートンは色が異なる光の違いがどこにあるのか正しい答えを導くことはできなかったのです。

人気ブログランキングへ

【関連記事】

 

 

| | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »