電磁気学

2013年2月14日 (木)

リニアモーターカーはどうやって走る?

リニアモーターカーとは

 新幹線の「のぞみ号」の速度はおよそ時速270km。東京と新大阪の間なら2時間30分で着いてしまうスピードです。しかし、この新幹線が開通する2年前に、新幹線よりもっと速いスピードが出る超高速鉄道の実現をめざした研究がスタートしていました。その鉄道がリニアモーターカーです。普通の電車は鉄のレールの上を鉄の車輪を転がして走るため、速度が早くなると車輪が滑ってスピードを上げることができません。そこでリニアモーターカーでは車体を浮かせて走らせることが考えられました。そして、その基本的なアイデアとなったのが磁石の性質だったのです。

山梨リニア実験線

どんな磁石で車体を浮きあがせるのか

 磁石はN極とS極を近づけるとくっつき、同じ極を近づけると反発します。リニアモーターカーの研究者たちは、この磁石の性質を使えば車体を持ち上げて走らせることことができると考えました。しかし、リニアモーターカーは車体を軽くする工夫はされていますが、普通の磁石で持ち上げることができる重さではありません。そのため電磁石を用いることが考えられました。 電磁石は鉄の棒に銅線を巻いたものです。この巻き線(コイル)に電流を流すとコイルが磁石になります。電流の向きを変えると電磁石のN極とS極が変わります。磁石の強さは電流を大きくするほど、コイルの巻き数を増やすほど大きくなります。ところが電熱線に電流を流すと発熱するように、コイルに大きな電流を流すと発熱してしまい、車体を浮かせるような強い磁石を得ることができません。そこで、大きな電流を流しても発熱しないコイルを使った超電導磁石という特殊な磁石が使われます。

リニアモーターカーのしくみ

 リニアモーターカーはこの超電導磁石を使って地上から約10センチメートル浮いて走ります。 図1のように、リニアモーターカーにはレールがありません。ガイドウェイと呼ばれる通り道に、車体を浮上させるための浮上・案内コイル、車体を走らせるための推進コイルが取り付けられています。

 コイルと磁石の間には、コイルのそばで磁石をすばやく動かすか、磁石のそばでコイルを動かすと電流が流れるという性質があります。

 超電導磁石を取り付けた車体が高速でガイドウェイを移動すると、浮上・案内コイルに電流が流れ電磁石となります。このとき浮上・案内コイルと超電導磁石との間に、N極とS極が引き合って車体を引き上げる力と同じ極同士が反発して車体を押し上げる力が起きて車体が浮き上がります。

Photo

  推進コイルに電流を流すとコイルが電磁石となり、コイルと車体の超電導磁石との間にN極とS極の引き合う力と、同じ極どうしが反発する力が起きて車体が進みます。

 Photo_2

 リニアモーターカーは最初は車輪で走り始め、時速200Kmになると磁石の力が大きくなって車体が浮き上がります。

 リニアモーターカーは現在山梨県で実用化に向けて実験が繰り返されています。リニアモーターカーの最高速度は550Km、実現すれば東京-大阪間を約一時間で結ぶ夢の超特急になります。

時速501キロ体験!リニアモーターカー車内映像 !

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2012年9月23日 (日)

リチャード・ファインマン博士の二重スリットの思考実験の講義

とても良い時代です。1964年のリチャード・ファインマン博士の授業の映像をこうも簡単に見ることができるのですから。

Richard_feynman_nobel

量子論は1個の電子が波の性質をもつことを明らかにしました。光が波であることを証明したヤングの実験において、光の代わりに電子を1個ずつ二重スリットに通すと、電子は回折・干渉を起こし、波の性質を現しました。

この講義は、1個の電子が同時に2つのスリットを通ったのかどうかは確かめることはできないということを明らかにするための思考実験について説明したものです。

Richard Feynman on the Double Slit Paradox: Particle or Wave?

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2012年3月11日 (日)

マイケル・ファラデーによる電磁誘導の発見(3)

電気力と磁気力はどのように伝わるのか

 ファラデーが電磁誘導を発見した当時、多くの科学者たちは、電磁相互作用における電気力や磁気力は遠隔作用によって働く力であると考えていました。遠隔作用とは、空間を隔てた物体と物体の間に働く力が、物体間の空間に変化も及ぼすことはなく直接的かつ瞬間的に伝わる作用のことです。たとえば、ニュートンが発見した万有引力なども遠隔作用で伝わると考えられていました。

 しかし、ファラデーは、電気力線や磁気力線という概念を用いて、電気力や磁気力は近接作用で働く力であると唱えました。近接作用は、物体と物体の間に働く力が、物体間に存在する媒質の変化を介して間接的かつ有限の速さで伝わる作用のことです。

 電磁誘導の実験結果から、電界の変化が磁界の変化を生じ、磁界の変化が電界の変化を生じることを明らかにした彼は、電気や磁気は媒質を伝わって周囲に影響を及ぼすと考え、1837年に電磁場の近接作用を唱え、遠隔作用を否定したのです。

光と電磁気には関係があるのか

 ファラデーは当時の研究論文で、『物質のいろいろな「力」の現象は、ひとつの共通の起源をもつ』、『物質のいろいろな「力」の現象は、お互いに関係・依存しあっているため、相互に変換でき、その作用の大きさは等しい』と述べています。彼が言うところの「力」は、現在の科学用語で言えばエネルギーのことです。つまり、彼はエネルギー保存の法則に言及していたのです。そして、彼は、さまざまな「力」の現象の関係を解き明かすことができるのではないかと考えていたのです。

 ファラデーが活躍していた頃、光の正体は波であることがわかっていました。光が波であるならば、光も近接作用で伝わることになります。彼は、電気と磁気が相互作用するように、光も電気や磁気と相互作用するのではないかと考え、光と電磁気の関係を調べる研究に取り組みました。

 当時、光は進行方向と垂直な方向に振動する横波であることが知られていました。太陽や電灯などの普通の光を自然光といいますが、自然光にはさまざまな面で振動する光の波が均等に含まれています。

偏光

 自然光が、ガラスや水面で反射したり、方解石の結晶や偏光板を透過したりすると、光が偏光してひとつの平面でしか振動しなくなります。次の図は自然光を偏光板に通したときの様子を示したものです。

偏光板を通る光

 ファラデーは光と電磁気の関係を調べるうえで、光の偏光に着目しました。そして、偏光に電気をかけると、光の振動面が変化して、光の波がねじ曲げられるかどうかを確認する実験を行いました。

 彼の実験装置は、両端に電極を取り付けた細長い入れ物に導電性の溶液を入れ、電極を電池に接続したものでした。そして、光をガラス板で反射させることによって作った偏光を、電気が流れている溶液に通し、偏光の振動面が次の図のように回転するかどうかを確認しました。

Photo

 彼は電気を連続的に流したり、断続的に流したりして、電界の状態を変化させてみました。また、光を通す溶液を変えたり、電流と光の向きを変えたりするなど、条件をいろいろと変えて実験を行いました。しかし、彼の予想に反して、電界が光に影響を与えることを示す結果は得られなかったのです。

磁気と光の関係を調べる

 光と電気の関係を見いだすことができなかったファラデーは、次に光と磁気の関係を調べることにしました。

 彼は強力な電磁石のN極とS極の間に偏光を通し、磁界が偏光の振動面を回転させるかどうかを確認しました。しかし、電界の場合と同様に、磁界が光に影響を与えることを示す結果は得られませんでした。

 そこで、彼は電極の間に光学実験用の鉛ガラスを置き、鉛ガラスに偏光を通してみました。すると、電磁石のスイッチをオンにして電流を流すと、偏光の振動面が回転することがわかったのです。電磁石のスイッチを切ると、偏光の振動面が元に戻りました。彼は、磁界が偏光の振動面を回転させることを発見したのです。

 彼は鉛ガラスの他にも透明な材料を使って同じ実験を行いました。すると、材料によって程度は異なるものの、磁界の強さを大きくすると、偏光の振動面の回転の度合いが大きくなることを発見しました。また、電磁石の磁極を逆にすると、偏光の振動面が回転する方向も逆向きになることを発見しました。

 このようにして、ファラデーは光と磁気の間に関係があることを突き止めました。1845年のことでした。この現象はファラデー効果と呼ばれています。

 ファラデーの一連の実験によって、光と磁気の間に関係があり、そして、磁気と電気の間に関係があることがわかりました。彼は、1846年に「光線振動の考察」という論文にまとめ、光が電磁波であることを予見しています。光が電磁波であることを理論的にまとめる仕事は、イギリスの物理学者ジェームス・クラーク・マクスウェルが引き継ぐことになったのです。

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2012年3月 7日 (水)

ファラデーとマクスウェル (Century Books―人と思想)

電気と磁気の間に何らかの関係があるのではないかと考え、電磁気の研究を始めたマイケル・ファラデーと、ファラデーの研究成果をもとに、電磁波の存在を予言したジェームス・クラーク・マクスウェル。この2人の功績によって電磁気学の扉が開かれました。

ファラデーとマクスウェルの人生とその功績をまとめた一冊です。

Faradaymaxwell
ファラデー(左)とマクスウェル(右)

単行本: 214ページ
出版社: 清水書院 (1993/02)
ISBN-10: 4389411152
ISBN-13: 978-4389411152
発売日: 1993/02
商品の寸法: 19.2 x 11.8 x 1.6 cm

目次

ファラデーとマクスウェルによって人類にもたらされた恩恵
1 ファラデーの一生と人となり
2 マクスウェルの一生と人となり
3 ファラデー・マクスウェルの場の思想と電磁気学の完成
ファラデーとマクスウェルの文通

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2012年3月 3日 (土)

マイケル・ファラデーによる電磁誘導の発見(2)

ソレノイドと電磁石の発見

 アンペールは、あるとき導線をぐるぐる巻きにして電流を流してみました。すると、導線のまわりに、棒磁石のまわりにできる磁界と同じように磁界が生じることを発見しました。彼はこのぐるぐると巻いた導線のことをソレノイドと名付けました。ソレノイドはコイルのことです。

Photo_2

 1825年、イギリスのウィリアム・スタージョンは、アンペールが発見したソレノイドの現象について実験していたときに、コイルの中に鉄の棒を入れてみたところ、磁界が強くなる現象を見つけました。

Sturgeon_electromagnet  当時、絶縁した導線がなかったために、彼はニスで絶縁した鉄心を使いました。彼は、鉄心の両端の磁界がより強くなることに気がつき、馬蹄型に曲げた鉄心を使い、磁極が同じ側にくるようにしました。この鉄心に導線を18回巻き付けました。

 この装置は約200グラムでしたが、コイルに電流を流してみたところ、4キログラムのおもりを持ち上げることができました。彼は、この装置を電磁石と名付けました。これが世界で初めての電磁石の発明となりました。

 彼の電磁石はそれほど強いものではありませんでした。彼は、導線ではなく鉄心を絶縁したため、導線の巻き数がおのずと制限されたからです。

 その後、アメリカのジョセフ・ヘンリーがスタージョンの電磁石の改良に取り組みました。1829年、彼は鉄心に絹で絶縁した導線を密に巻くことで、非常に強力な電磁石を作りました。

Sturgeonhenry
スタージョン(左)とヘンリー(右)

電磁誘導の発見

 ファラデーはソレノイドや電磁石が発明された後に、電磁気の研究の仕事を再開しました。デービーがこの世を去ってから2年後の1831年、彼は、次の図のように、環状の鉄心(鉄の輪)に2つのコイルを巻き、一方のコイル(1次コイル:左側)を電池に、もう一方のコイル(2次コイル:右側)を検流計に接続しました。

 彼が1次コイルの電池のスイッチをつなぐと、その瞬間に2次コイルに取り付けた検流計の針が触れて振動し、しばらくすると元の位置に戻りました。また、電池のスイッチを切った瞬間にも、検流計の針が振れ、やはり、しばらくすると元の位置に戻りました。これは、通電しないままの状態や、通電したままの状態では、電流は流れないが、通電した瞬間と遮断した瞬間に電流が流れることを意味しています。続いて、彼は中空のコイルの中で磁石を動かすと、コイルに電流が流れることを発見しました。

 ファラデーが発見した現象を電磁誘導と言います。エルステッドは、電界を変化させることにより、磁界を変化させることに成功しましたが、ファラデーは磁界を変化させることにより、電界を変化させることに成功したのです。

 ファラデーの電磁誘導の発見は世界で初めて発電機の発明でもありました。彼は電気を運動に変化させるモーターを発明し、そして運動を電気に変換する発電機を発明したのです。

 こうして、電気と磁気の間に関係があることを突き止めたファラデーが次に取り組んだのは、光と電気の関係を突き止める研究でした。

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2012年2月28日 (火)

マイケル・ファラデーによる電磁誘導の発見(1)

電気と磁石の関係が見つかる

 1752年に凧揚げの実験で雷の正体が電気であることを突き止めたアメリカのベンジャミン・フランクリンは、雷の放電が磁石の極性を反転させるという記録を残しています。

 電気にはプラスとマイナスがあり、磁石にはN極とS極があります。電気も磁石も、それぞれ同じもの同士は反発し、異なるもの同士は引き合うという性質があります。また、電気や磁石の力は、互いに力を及ぼし合う物体間の距離が近いほど大きくなります。そのため、電気と磁気の間には何らかの関係があるのではないかと古くから考えられていました。

 1820年、デンマークのハンス・クリスティアン・エルステッドは実験器具のボルタ電池のスイッチをONやOFFにしていたところ、電池の直ぐ側に置いてあった方位磁針の向きが変わることを発見しました。彼は、この現象を詳しく調べ、導線に電流を流すと、その周りに磁界が発生することを発見し、電気と磁気の間に密接な関係があることを見い出しました。

Photo エルステッドの実験結果は、フランスのフランソワ・アラゴによってフランス科学アカデミーで紹介されました。その報告を耳にしたアンドレ=マリ・アンペールは電磁気の研究に取り組みました。彼は、導線に電流を流すと、電流が流れる方向に対して右ネジを回す方向に磁界が発生する右ネジの法則を発見し、電流とそのまわりにできる磁場との関係をアンペールの法則としてまとめました。ところで、この時代は電流の流れの向きは定義されていませんでした。アンペールは右ネジの法則を定義するにあたって、電流はプラスからマイナスに流れる決めたのです。 

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フランクリン(左)とエルステッド(中)とアンペール(右)

電気モーターの発明

 エルステッドやアンペールが電気と磁気の関係について発見して間もなく、イギリスのハンフリー・デービーとウイリアム・ウォラストンは電動機の開発に着手しました。しかしながら、この開発は失敗に終わりました。

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 デービーの助手をしていたマイケル・ファラデーは、彼らからこの開発の話を聞き、独自に電動機の研究を進めて、やがて電動機を作り上げました。彼は、世界で初めて電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置、つまり電気モーターを開発したのです。

 ファラデーは、この成果をデービーやウォラストンに相談することなく、発表してしまいました。

 デービーはファラデーのこの行動に激怒し、その結果、デービーとファラデーの師弟関係が悪化することになりました。

 その後、ファラデーはロンドン王位協会の会員になりましたが、このとき、デービーはファラデーが会員になることに猛反対し、ファラデーがウォラストンの電動機のアイデアを盗んだとまで批判しています。

 もっとも、デービーは後に「私の最大の発見はファラデーである」と言うぐらい、ファラデーのことを高く評価しています。当時、デービーがファラデーを強く批判したのは、デービーがファラデーの業績に嫉妬したからとも言われています。

 いずれにせよ、ファラデーはしばらくの間、電磁気の研究をやりにくくなりました。この頃、産業革命による科学・技術の仕事が増えてきて、ファラデーは電磁気以外の仕事を行わなければならない立場に追いやられていました。

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デービー(左)とファラデー(右)

 ファラデーは電流が方位磁針の向きを変化させるなら、磁石が電流に影響を及ぼすのではないか、電場や磁場は光に影響を及ぼすのではないかと考えていました。それらを実験で確かめようとしましたが、何も発見することができませんでした。彼は、電磁気に関する研究をさらに進めたいとう思いを抱きながら、彼にとっては日常の平凡な仕事が続きました。ようやくファラデーが電磁気の研究に戻ることができたのは1830年代になってからのことでした。

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