偏光

2012年7月 3日 (火)

透明なプラスチック(1)

 一昔前までは透明な材料と言えばガラスが代表格でした。しかし、現在では、優れた透明性をもつプラスチックが開発され、ガラスの代わりに使われるようになってきました。プラスチック材料として透明性をを重視した素材といえば、ポリカーボナートとアクリル樹脂が代表格です。

 ポリカーボナートもアクリル樹脂も透明性の高いプラスチックですが、透明性だけで比較すると、アクリル樹脂の方がポリカーボナートよりも優れています。アクリル樹脂は眼鏡や光ファイバーの材料として使われます。もちろん、その透明性は石英ガラスには及びませんが、プラスチックの中では特に透明性が高い材料です。

 しかしながら、アクリル樹脂には割れやすいという欠点があります。そこで、アクリル樹脂までの透明性は必要ないが、割れにくいなどの耐久性を重視する場合にはポリカーボナートが使われます。

 たとえば、CDやDVDのディスクは、データを読むための光がディスクの板の厚み方向を往復するだけで良いので、アクリル樹脂ほど透明性がなくても支障はありません。そこで、CDやDVDのディスクの素材にはポリカーボナートが使われています。

 ただし、ポリカーボナートを光学用途に使うには複屈折(参考記事:方解石による複屈折)が大きいという問題があります。

 ポリカーボナートのポリマーを引き伸ばして成型する場合、ポリマーは成形の時に流れた方向に引き伸ばされた構造になります。このとき、ポリマーの鎖の方向と、鎖と垂直な方向との屈折率が異なるため、複屈折が生じます。

Photo

 複屈折が生じると、材料の縦方向と横方向で焦点距離が変わってしまうため、光でデータを読み取るのが難しくなります。そこで、これを解消するために、分子量を小さくしたり成形方法を工夫したりして複屈折をなるべく小さくするような工夫がなされています。

 一見、透明に見える材料も、力のかかり具合によって、屈折率がバラツキ複屈折を生じます。これを光弾性といいます。たとえば、プラスチック製のスプーンを偏光フィルタを通して観察してみると、歪んだ部分が色づいて見えます。

548120_298541163552524_1746366305_n

【参考】

「機能性プラスチック」のキホン

桑嶋 幹 (著), 久保 敬次 (著)

欲しい性能を付与できる進化した有機材料の世界

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月21日 (水)

液晶ディスプレイの仕組み(4)

■バックライトのしくみ

液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)のバックライトとして広く使われている光源は、直径数ミリメートル、長さ数百ミリメートルの細長い形をした冷陰極管という小型の蛍光ランプです。

1

 冷陰極管は細長い形をしているため、そのままバックライトとして使うと、次の図のようにLCDの明るさにムラが生じてしまいます。

2

 そのため、バックライトはLCDの明るさにムラが生じないよう、光が効率的に液晶パネル全面に均等に届くよう工夫されています。

 バックライトの配置には、液晶パネルのすぐ後ろに冷陰極管を配置する直下ライト方式と、液晶パネルの側面に冷陰極管を配置するサイドライト(エッジライト)方式があります。直下ライト方式はLCD全体が厚くなりますが、画面を明るくすることができるので、大型の液晶テレビなどで採用されています。他方、サイドライト方式は多くのLCDで採用されています。ノートパソコンのLCDはサイドライト方式を採用しています。

3

 反射板、反射シートは冷陰極管から出る光を無駄なく使うために使われます。拡散板は画面の明るさのムラを低減し、プリズムシートは画面の明るさを向上させます。導光板はサイドライト方式のみで使われ、側面の冷陰極管からやってくる光を液晶パネルの前面の方へ導く役割をします。それでは、一般的によく使われているサイドライト方式のバックライトについてもう少し詳しく説明しましょう。

■サイドライト方式バックライトのしくみ

 次の図はサイドライト方式バックライトの構造を示したものです。サイドライト方式の冷陰極管は透明度の高いアクリル樹脂でできた導光板の端に取り付けられています。冷陰極管から出た光は反射シートによって導光板に入り、全反射を繰り返しながら導光板の中を進んでいきます。

4

 このとき、光が導光板の中で全反射するだけなら、光は導光板の外側に出てくることはできません。そこで、導光板の下側には、光を乱反射させて導光板の上側に放出させるための反射ドットが取り付けられています。

5

 反射ドットは、冷陰極管に近いところは、粗く配置されており、遠くなるに従って密に配置されています。この工夫によって、導光板の上側に出てくる光の量を均一に保ちます。

6

 反射ドットには、導光板に白色インクでドットを印刷したものと、導光板を成型するときに金型で微細な溝を取り付けたものがあります。

 導光板の下側に反射板がありますが、これは導光板の下側に入った光を無駄なく利用するためのものです。導光板の上側から放出された光は拡散板で拡散されたのち、プリズムシートを通った後に1枚目の偏光板に入っていきます。

7

白色LEDバックライト
携帯電話のバックライトには白色LEDが使われています。また、最近ではノートパソコンなどのLCDのバックライトにも白色LEDが使われるようになってきました。

■LCDが斜めから見えにくい理由

 最近のLCDは斜め方向からでも良く見えますが、ひと昔前のLCDや、現在でも低価格な商品に使われているLCDは斜めから見にくいという欠点があります。

 LCDが斜めから見えにくい理由は、液晶分子が棒状の形をしており、縦方向と横方向の屈折率が異なるからです。

 LCDが中間色を表示しているとき、液晶分子は次の図のように斜めに配列しています。LCDは正面から見たときに良く見えるように作られているため、斜めから見たときには角度によって見えにくくなり、視野角が狭くなっています。

8

■斜めからも良く見える液晶ディスプレイ

 LCDの基本的な表示原理であるTN(Twisted Nematic)型LCDは次の図のように液晶分子が電界の向きにそって起き上がって垂直に整列します。そのため、特に液晶分子が斜めに立ちあがる中間の明るさでは、LCDを見る角度によって、明るさが大幅に違って見え、視野角が狭くなります。

9

 この問題を解決するには、液晶分子の配列を工夫する必要があります。例えば、液晶分子を次の図のように交互に向きを変えて配列すると、液晶分子全体の屈折率を平均的に揃えることができるので、視野角が広がり、斜めからも見やすくなります。

10

 このようにLCDの視野角を広げる技術を広視野角化技術といいます。広視野角化技術にはいくつかの方法がありますが、ここではIPS方式(In Plane Switching)について紹介します。

 次の図はIPS方式のLCDの構造を示したものです。IPS方式とTN型のLCDで大きく異なる部分は電極の位置です。TN型では電極は液晶分子を上下に挟み込むように配置されていますが、IPS方式では電極を平面上に設置しています。このため、IPS方式は電圧をかけたときに発生する電界の方向がTN型と異なり、その結果、液晶分子が配列する方向が異なります。IPS方式では、液晶分子が画面と平行を保ったままで整列するため、広い視野角で光が出ます。ですから、斜め方向からもよく見えるのです。

11

■最後に

 LCDはより綺麗な表示を実現するために、いろいろな工夫が施されており、関連する技術もどんどん進歩しています。そのため、今回説明したしくみとは異なるLCDもたくさんありますし、これからも新しいしくみのLCDが登場してくるでしょう。それらをすべて解説するのは困難ですが、いかなるLCDも偏光板と液晶の配列で画面表示を行う基本原理は変わりません。

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月20日 (火)

液晶ディスプレイの仕組み(3)

■液晶ディスプレイのカラー表示のしくみ

 モノクロの液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)で表示される画像の明るさ(濃淡)は液晶板を通り抜けてくる光の量で決まります。ノーマリーホワイトモードの場合、次の図のように、液晶分子に電圧が加えられていない部分(V0)は白色、十分な電圧が加えられている部分(V2)は黒色、その間の電圧(V1)が加えられている部分は灰色となります。256色表示のモノクロLCDは液晶の配列を256段階切り替えることができるようになっています。白から黒まで256階調の表示を行うことができます。

Photo

 液晶分子はブラインドの役割をしているだけですから、LCDでカラー表示を行うためには液晶パネルを通り抜けてくる光に色をつける必要があります。光に色をつける方法には、カラーフィルター方式(CF:Color Filter)とカラーフィルターレス方式(CFL:Color Filter Less)という2つの方法があります。いずれの方法のLCDも光の三原色で色を作ります。

■光の三原色で色を作る

 次の図は光の三原色を示したものです。この三色の光を任意の割合で混ぜると、様々な色光を作り出すことができます。例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)の光を混ぜると白色(W)の光を作ることができます。赤(R)と緑(G)の光では黄色(Y)の光となります。このように光の足し算で色をつくることを加法混色といいます。

Photo_2

 加法混色には、異なる色光を重ねて色をつくる同時加法混色、色分けされた円盤を回転したときのように時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色、細かい色の点をモザイク状に敷き詰めて色をつくる並置加法混色があります。

Photo_3

Photo_4

■カラーフィルター(CF)方式のしくみ

 電灯の光を赤色セロファンに通すと光の色が赤くなります。CF方式のLCDはこれと同じ原理で光に色をつけています。一般的に使われているLCDの多くがCF方式を採用しています。

Photo_5

光に色がつく
私たちが色を見ることができるのは、光源の物体を見るときか、光で照らし出された物体を見るときです。「光に色がつく」という表現は本当は正しくありません。

 カラーLCDは様々な色の光を出す必要があります。単純にカラーフィルターで色を付ける仕組みでは、100万色を出すのに100万種類のカラーフィルターが必要となってしまいます。また、カラーフィルターが固定ではそもそも表示を切り替えることができません。CF方式では光の三原色(R=赤、G=緑、B=青)の3つのカラーフィルターで様々な色を表示しています。

 CF方式のLCDの白色の部分を倍率の高いルーペ(透明なガラス球がわかりやすい)で拡大して見てみると、赤(R)・緑(G)・青(B)の色がタイル状に並んでいることがわかります。同様に黄色い部分を見てみると、青(B)がなく、赤(R)・緑(G)の色が並んでいることがわかります。このようにCF方式のLCDは光の色の点を画面上に並べて並置加法混色で色を作り出しています。

Photo_6

 任意の色を表示するためには、1画ごとに赤(R)・緑(G)・青(B)の光を任意の割合で混ぜ合わせることができるようにする必要があります。モノクロLCDは、最初の図に示した通り、1画素に対して液晶の配列がひとつになっています。これに対して、CF方式のLCD は次の図のように1画素が3つのサブ画素に分割されており、それぞれのサブ画素に赤(R)・緑(G)・青(B)のフィルターが取り付けられています。

Photo_7

 液晶分子はサブ画素ごとに配列するようになっており、3色の明るさを個別に変化させることができます。これによって1画素ごとに光の三原色の混色をしています。赤(R)・緑(G)・青(B)の液晶分子の配列をそれぞれ256段階切り替えることができる場合、それぞれの色を256階調表示にすることができるので、全体として表示可能な色の数は256の3乗(=16,777,216色)となります。すべての画素で個別に16,777,216色を表示することが可能ですから、画面に表示する人物や景色などの画像も16,777,216色を使って表現することができます。これがトゥルーカラーまたはフルカラーと呼ばれる表示モードです。

■カラーフィルターレス(CFL)方式とは

 CFL方式のLCDはバックライトに光の三原色を出すLED (発光ダイオード、Light Emitting Diode)を使います。CFL方式のLCDは光の三原色のLEDの点灯時間を連続的に切り替えることによって、継時加法混色で色を表示しています。

 CFL方式のLCDは、光の三原色のLEDで任意の明るさの色光を作り出すため、次の図のように1画素に対して液晶の配列はひとつとなります。液晶分子のブラインドの役割は単純に光を通すか(ON)か、通さない(OFF)だけで済むため、中間の配列状態を取る必要がなくなります。

Photo_8
 上の図で液晶分子に電圧がかかっている部分は、光が透過しないので黒色になります。電圧がかかっていない部分は光が透過しますが、何色が表示されるかはLEDの点灯状態によって決まります。図の右側のように赤(R)・緑(G)・青(B)のLEDがすべて点灯している場合は白色、真ん中のように青(B)が消灯していて、赤(R)・緑(G)が点灯している場合は黄色になります。

 バックライト用LEDは赤(R)・緑(G)・青(B)の3色のチップがひとつになったものが主流になってきました。3つのLEDが1つで済み、単位画素あたりの三色光を増加させることができるため、明るくなり、色ムラが少なくなります。

Photo_9

 最近はCFL方式のLCDの開発が進み、CFL方式のLCDが増えてきています。CFL方式のLCDは液晶分子の配列に中間状態がありません。またCF方式のLCDのようなサブ画素がないため、色が表示されている画素が完全に開口しています。そのため明るくて発色性が良いという特長があります。さらに、材料のコストダウンや、製造工程の短縮ができるなどのメリットがあります。

CFL方式のLCDが実現できた背景には、青色LEDの完成と、LEDのコストダウンがあります。LEDのしくみについては本サイトの下記で解説しています。

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月19日 (月)

液晶ディスプレイの仕組み(2)

■液晶ディスプレイ(LCD)の表示は光のON/OFF

 透過型LCDのバックライトは常時点灯しています。バックライトの光は、画面上の白い部分では通過しており、黒い部分では遮断されています。

1

 バックライトが常時点灯しているのにも関わらず、画面の白い部分と黒い部分が明瞭に区別でき、さらに中間の明るさの表示ができるのは、バックライトの光の通過と遮断の制御が確実に行われているからです。この光のON/OFFで重要な役割をしているのが偏光板と液晶です。偏光板と液晶がどのような働きをしているのかTN(Twisted Nematic)型液晶を例に考えてみましょう。

■偏光板と液晶の組み合わせで光のON/OFF

 透過型LCDは向きが90度異なる2枚の偏光板の間に液晶が封入されています。

2

 バックライトの光は自然光と同様にさまざまな振動面で振動する光を含んでいます。これは、偏光で光のON/OFFを実現するLCDにとって都合が悪いので、偏光板①でこの偏光板と同じ向き(透過軸)に振動する光を取り出します。これによって振動方向がそろった光を使います。

 この光はそのまま進むと次の図のように偏光板②を通過することができないため遮断されます。このとき、LCDの画面表示は黒となります。

3

 偏光板①を通過した光が偏光板②を通過できるようにするには、次の図のように2枚の偏光板の間で光を90度ねじ曲げる必要があります。このとき、LCDの画面表示は白となります。

4

 2枚の偏光板の間で、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりする役割をするのが液晶分子です。

 光は液晶分子の配列にそって進む性質があります。そのため、液晶分子の配列を変化させることによって、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりすることができるのです。

■液晶分子の配列を制御するには

 液晶分子の配列は液晶に電圧をかけることによって制御することができます。液晶に電圧をかけると、液晶分子は電界の向きにそって規則的に配列します。液晶に電圧をかけていないときは、液晶分子の配列はバラバラです。

 液晶分子の配列がバラバラだと、光の通り方もバラバラになります。すると、画面の明るい部分と暗い部分の表示が明瞭でなくなり、綺麗な表示ができなくなります。ですから、液晶に電圧がかかっていない状態でも、液晶分子を規則的に配列させておく必要があります。

 ところで、液晶分子は溝にそって配列するという性質があります。そこで、液晶パネルの内側には細かい溝が刻まれた配向膜という薄い膜が取り付けられています。液晶分子は電圧がかかっていない状態でも、右図のように配向膜の溝にそって規則的に配列します。配向膜の溝の向きを90度ずらすようにして向かい合わせ、その間に液晶を封じ込めると、液晶分子は右図のように90度ねじれて配列します。

5

配向膜にはポリイミドという樹脂が使われています。この樹脂をガラス基板に塗布し、薄い膜を作ります。布を巻き付けたローラーで膜の表面を一定の方向に擦ること(ラビング)によって溝がつけられます。配向膜の溝に液晶分子がなぜ規則的に配列するのかはまだ十分に解明されていませんが、配向膜はLCDの性能を左右する重要な要素です。

 このように液晶分子が90度ねじるように配列すると、ここを通過する光は次の図の左のように液晶分子の配列にそってねじ曲げられます。また、この状態で電圧をかけると、液晶分子は次の右図のように電界にそって規則的に配列するため、光はねじ曲げられずにそのまま進みます。配向膜の向きを90度ずらして、液晶分子がねじれて配列するようにしておくことが光を制御する上で重要なポイントになっています。

6

 液晶分子で光の向きを変えることができたら、後は偏光板を使って光を通過させたり、遮断したりするだけです。90度向きの異なる2枚の偏光板で挟むと、次の図のようになります。

7

 この場合、光は液晶に電圧をかけていないときに偏光板を通過します。液晶に電圧をかけると、光は遮断されます。つまり、液晶に電圧をかけていないときは画面に白が表示され、電圧をかけているときは黒が表示されます。液晶にかける電圧の大きさを変えると、液晶分子の配列の度合いが変わります。液晶分子がねじれた状態と直立した状態の中間の配列になると、光の通過量が少なくなるため画面に灰色が表示されます。この光の制御方法をノーマリーホワイトモードといいます。ノーマリーホワイトモードの液晶のしくみを簡単に図で示すと次のようになります。

8

ノーマリーブラックモード

2枚の偏光板の向きが同じでも、光を通過させたり、遮断したりすることが可能です。この場合、電圧をかけていないときに光が遮断されるので黒、電圧をかけているときに光が通過するので白となります。この制御方法をノーマリーブラックモードといいます。このモードは電圧をかけていないときに黒を表示するため、液晶分子の配列のバラツキによって、光が漏れて黒が綺麗に表示できないという欠点がありました。しかし、最近ではこの欠点を解決した液晶ディスプレイもあります。

 ノーマリーホワイトモードとノーマリーブラックモードのどちらが良いかは、液晶の配列させ方に関係しています。TN型液晶では、ノーマリーホワイトモードの方が黒の表示がより綺麗になります。黒の表示が重要視されるのはLCDが光の明るさの濃淡で画面表示をしているからです。カラー液晶ディスプレイは光の3原色を使った加法混色で色を表示しています。光が漏れると正しい色を作り出すことができなくなりますから、光が何もない黒の表示が重要になります。

■LCDの画面から出てくる光を確認してみよう

 偏光板②を通過する光、すなわちLCDの画面から出てくる光は偏光板②と同じ向きに振動する光であることがわかります。次の写真はLCDの画面をデジカメの偏光フィルタを通して撮影したものです。偏光フィルタの向きによって、LCDの画面が見えたり、見えなくなったりします。

9

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月18日 (日)

液晶ディスプレイの仕組み(1)

■コレステロールの研究で不思議な物質を発見

 1888年、コレステロールの研究をしていたオーストラリアの植物学者F・ライニッツァーは、コレステリルベンゾエートという物質に普通の固体の結晶とは異なる性質があることを発見しました。

 普通の固体は結晶を加熱すると、ある温度(融点)で液体となります。ところが、この物質の結晶を加熱すると145℃で白濁した液体となり、さらに加熱すると178.5℃で透明な液体となったのです。つまり、彼はコレステリルベンゾエートに2つの融点があることを発見したのです。この物質を不思議に思った彼はドイツの物理学者O・レーマンに詳しい調査を依頼しました。レーマンは物質を加熱しながら観察できる顕微鏡をもっており、液体の状態のコレステリルベンゾエートに本来は固体の結晶がもつ光を2つの方向に屈折させる複屈折の性質があることを発見しました。彼はこの物質が液体でありながら固体の結晶の性質をもつと考え、「液晶」(Liquid Crystal)と名付けました。

 1963年、米国電気メーカーRCA社のR・ウィリアムズは液晶に電圧をかけると透明な液晶が不透明に変わることを発見しました。1968年に同社によって液晶を利用した表示装置が開発されました。

 1973年に日本のSHARPによって、世界初の液晶表示装置をもつ電卓が開発され、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)はいろいろな機器に利用されるようになりました。

■液晶とは何か

 液晶は液体と固体(結晶)の中間の状態、またはそのような状態となる物質のことです。そのため、液晶は液体の流動性と固体の結晶性を兼ね備えています。液晶の分子は液体の分子のように自由に動くことができますが、ある方向については固体の結晶の原子のように規則的に配列する性質があります。LCDに使われている液晶は細長い形をしています。例えば、5CB と呼ばれているネマティック液晶の分子は、次の図のようにベンゼン環がつながった硬い部分と炭素が直鎖状につながった柔らかい部分からなる構造をしています。

Image1

 液晶分子はこの柔らかい部分があるため液体のような流動性をもち、硬い部分があるため規則正しく配列することができます。

ネマティック液晶は分子が一定の方向を向いて規則的に配列するが、三次元的な配列には秩序をもたない液晶

 液晶に電圧をかけると、シアノ基(-CN)によって、液晶分子中に正電荷に偏った部分と負電荷に偏った部分ができて分極します。そのため、液晶分子は電界の方向に規則正しく配列します。電圧をかけていないときは規則的に配列しません。

Image2

■どうして液晶で画像を表示できるのか

 液晶は自ら光を出しませんが、液晶分子の配列が変わると、光を透過したり、反射したりする割合が変わります。LCDは液晶にかける電圧の強さを制御することにより、明るさを変えることによって画像の表示を行っています。このしくみは窓のブラインドを閉じたり、開いたりするのとよく似ていると考えることができるでしょう。

Image3

 LCDはこの「ブラインド」の開閉を画面の1画素単位で行い、各画素の明るさを変えることによって画像を表示しています。

Image4

 LCDには透過型LCDと反射型LCDがあります。透過型LCDは液晶パネルの背面にバックライトを配置し、液晶パネルを透過する光を使って画像を見えるようにします。ノートパソコンや液晶テレビは透過型LCDです。透過型LCDは暗いところではよく見えますが、バックライトより明るい光が当たると見えにくくなります。一方、反射型LCDはバックライトがなく、外部の光を液晶パネルの背面にある反射板に反射させることによって画像を見えるようにします。反射型LCDは時計や電卓などの表示に使われています。反射型LCDは暗いところでは見えにくく、光がまったくないところでは見えません。

Image5

 最近では透過型と反射型のハイブリッド型のLCDもあります。このタイプのLCDはバックライトと反射板の両方を使うため、明るいところでも、暗いところでもよく見えます。屋外で利用することの多い携帯電話のディスプレイなどをより見やすくすることができるでしょう。
 それでは、LCDがどのようにして液晶分子を使って「ブラインド」の開閉を実現しているのか、これから透過型LCDのしくみを例に考えていきましょう。そのためには、まず光の偏光という現象を理解する必要があります。

■偏光とはどのような現象か

 波には波の進行方向と垂直に振動する横波と、波の進行方向に水平に振動する縦波があります。身近な例では、光の波が横波で、音波が縦波です。

Image6

 横波は振動方向と進行方向が1つの平面上にあります。光の波がこの平面で振動することを光の偏りといい、そのような光を偏光と言います。自然光や電灯などの光源から出る光には振動面がバラバラの偏光が均等に含まれています。

Image7

 さまざまな振動面の光を含む光から、ある振動面で振動している偏光を取り出すことができるのが偏光板です。

Image8

 2枚の偏光板を置いて、1枚の偏光板を回転させながら光の明るさを調べると、偏光板が90度回転するごとに明るさが変わります。光を偏光板に通すと、光の振動方向がそろいます。光は次の図のように最初に通り抜けた偏光板と同じ向きの偏光板を通り抜けることができますが、垂直の向きの偏光板は通り抜けることができません。

Image9
 これは簡単な実験で確かめることができます。次の写真は2枚の偏光板を同じ向きに重ねたときの光の透過を示すものです。2枚の偏光板が重なったところで光が透過して文字が見えます。

Image10

 偏光板を1枚だけ90度回転させると、次の写真のように偏光板が重なった部分が光を透過しなくなり文字が見えなくなります。

Image11

 向きの異なる偏光板を2枚固定して並べたとき、2枚の偏光板の間で光が偏光する方向を自由に変えることができたら、偏光板を通過する光を制御することができます。LCDでその役割をしているのが液晶です。光は液晶分子の配列にそって偏光するという性質があります。つまり、液晶分子の配列を変えることによって、光を液晶の配列にそってそのまま直進させて通過させたり、ねじ曲げて遮断したりすることができるのです。

 液晶分子の配列と偏光がどのようにLCDで使われているかについては「液晶ディスプレイの仕組み(2)」で説明します。

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年12月 6日 (火)

方解石による複屈折

方解石は炭酸塩鉱物で、主成分は炭酸カルシウムCaCO3です。カルサイト(calcite)、石灰石とも呼ばれます。純粋なものは無色透明ですが、不純物あが混入したものは色がついており、特に美しいものは大理石として扱われます。

方解石に光を通すと、光が結晶の方向によって2つの光線に分けられます。そのため、方解石を通してものを見ると、次の写真のように二重になって見えます。この現象を複屈折といいます。

Photo

光は横波のため、次の図のように進行方向と垂直な様々な面で振動します。

Photo_2

いま、真空中の光速を c、物質中の光速を vとすると、屈折率 nは

n = c/v

であらわすことができます。この式から物質中の光の速度が変わると、屈折率が変わることがわかります。

方解石を通る光は、その振動面の方向によって、速度が異なります。そのため、複屈折が生じます。

人気ブログランキングへ

| | コメント (0) | トラックバック (0)