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2012年1月11日 (水)

光速は有限か無限か 光速の測定(3) ブラッドリー

■年周視差と光行差

 イギリスのグリニッジ天文台台長を務めた天文学者ジェームス・ブラッドリーは恒星の年周視差を観測しているうちに、光行差を発見し、光速を求めました。

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 年周視差は、地球の公転により、季節によって、地球から遠くにある恒星より、近くにある恒星の方が、見える位置がより大きくずれる現象で、地球と恒星と太陽をなす角度のことです。

年周視差

 年周視差を求めるには、恒星の位置を測定し、半年後に再び恒星の位置を測定します。

 恒星の年周視差の値は非常に小さいため、その測定は困難を極めるものでした。たとえば、16世紀には、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが望遠鏡で年周視差が認められないことから、コペルニクスの地動説を否定し、天動説を支持しました。

1597年にヨハネス・ケプラーがケプラーの法則を発見し、天動説を支持した。ケプラーはブラーエの助手で、ケプラーの法則をブラーエが観測した膨大なデータから求めた。

  年周視差の測定に初めて成功したのはドイツの天文学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルです。彼は1838年にはくちょう座61番星の年周視差を0.314秒と求めました。

 ブラッドリーが年周視差について調べていたのは、ベッセルが年収視差を求めた100年以上前のことです。彼は恒星の年周収差を調べているうちに、恒星の見かけの位置が地球の公転によってずれる現象を発見しました。当初、彼はこの現象こそが年周視差と考えましたが、恒星の位置が予想よりも大きくずれることに気がつきました。

 彼はこの現象の理解に悩みましたが、1728年秋にテムズ河のヨット遊びに参加したときに、あることに気がつきます。彼の乗っていたヨットのマストには風向き計がついていました。彼は、ヨットが進む向きを変えると、風向き計の指し示す向きが変わることに気がつきました。つまり、ヨットが進む向きを変えると、風向きが変わるように見えたのです。彼がこの現象について水夫に聞くと、水夫は、風向きは変わっておらず、風向き計の指し示す方向が変わるのは、ヨットが向きを変えたからであると答えました。

 彼はこの現象から、恒星の位置がずれるのは、光速と地球の公転速度によるものであることを直ちに理解しました。観測者が移動すると、恒星の位置が移動方向にずれて見えることを発見したのです。この現象を光行差といいます。

 光行差は、垂直に降る雨の中を自動車に乗って移動したとき、自動車内から雨がどのように見えるかという現象と同じです。自動車が止まっているとき、雨は真上から降ってきますが、自動車が走り出すと、自動車内の人からは、雨が斜め前方から降ってきたように見えます。このとき、雨がどのぐらい傾いて見えるかは、自動車の速さによって変わります。

Photo_2

 これを地球と恒星の関係にすると、地球が自動車、恒星からやってくる光が雨、自動車内の人が観測者になります。地球は動いていますから、恒星からやってくる光は、地球にいる人にとっては、地球の速さ分だけ、斜め前方からやってくるように見えます。

Photo_4

 ブラッドリーはりゅう座のガンマ星の観測データから、恒星のずれる角度を求め、その値から、太陽から地球まで光がやってくるのに要する時間は8分12秒と計算しました。

 ブラッドリーは実際には光速は求めていません。それは、地球の公転速度や公転半径が正確にわかっていなかったからと考えられています。

太陽から地球まで光がやってくるのに要する時間は8分19秒です。この値とブラッドリーが求めた8分12秒から、ブラッドリーが求めた光速を単純に求めてみると、

(480+19)/(480+12)×2.998×108=3.04×108 m/sec

と考えることができるでしょう。

■補足 ブラッドリーの計算と疑問点

ブラッドリーの観測結果では、りゅう座のガンマ星がずれる角度θは20.2秒でした。

天球の半径rを1とした円を考え、円周角20.2秒の弧の長さを求めてみましょう。

1秒は1/3600度ですから、20.2秒は20.2/3600度になります。また、1度は円周の1/360に相当しますから、20.2秒は円周の20.2/3600×1/360になります。

円周の長さは2πrですから、半径r=1で、円周角20.2秒の円弧は、

2π×20.2/3600 × 1/360 = 9.79324×10-5

となります。先ほどの図で光速をc、公転速度をvとすると、次の図のようになります。

Photo_3

上図より、

c:v=r:20.2秒の円弧の長さ

の関係がありますから、

c:v=1:9.79324×10-5

c=v/9.79324×10-5    ①式

となります。

太陽から地球までの距離をLとすると、太陽から地球まで光がやってくるのに要する時間tは、

t=L/c

になります。よって、

t=L/(v/9.79324×10-5 )  

t=1/9.79324×10-5×L/v  ②式

となります。

一方、地球の公転周期Tは、公転距離/公転速度ですから

T=2πL/v  

となります。これをLでとくと、

L=vT/2π          ③式

③式を②式に代入すると、

t=1/9.79324×10-5×T/2π

となります。

T=365日×24日×60分

を代入すると、

t=8.19分=8分11.5秒=8分12秒

となります。

このことは下記の論文の646ページあたりから書いてあり、653ページの上から7行目に結論として、太陽から地球まで8分12秒かかると書いてあります。

A Letter from the Reverend Mr.James Bradley Savilian Professor of Astronomy

http://atomlaser.anu.edu.au/bradley1727_28philtrans_v35.pdf

書籍やインターネットで調べてみると、ブラッドリーの測定した光速は301,000 km/sと書いてあるものが多く見つかります。

地球の公転速度は29.8キロメートルですから、この値を①式に代入すると、

c = 29.8/9.79324×10-5 = 304291 km/s  = 3.04 ×10-8 m/s

となります。これは、上で求めた

(480+19)/(480+12)×2.998×108=3.04×108 m/s

の値と一致します。

なお、レーマーの実験結果に基づいてホイヘンスが光速を求めたとき、ホイヘンスは地球の公転の直径を29億9120万キロメートルとしています。地球から太陽までの距離をこの値の半分とし、かかった時間が8分12秒(492秒)とすると、

c = 2991200000*0.5/492 = 30398 km/s = 3.04 ×10-8 m/s

となります。

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