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2011年12月27日 (火)

日焼けの仕組みと日焼け止めクリームの仕組み

■日焼けの原因となる紫外線

 日焼けは皮膚の細胞内に存在する物質が化学変化することで生じます。物質が化学変化を起こすにはエネルギーが必要ですが、日焼けを起こす化学反応のエネルギー源は太陽光に含まれる紫外線です。紫外線より波長の長い可視光線や赤外線では日焼けは起こりません。可視光線や赤外線は日焼けに必要な化学反応を起こすほどのエネルギーをもっていないからです。可視光線や赤外線より波長が短い、つまり振動数が大きくて高いエネルギーをもつ紫外線が日焼けを起こします。紫外線は波長の長さで次の図のようにUV-A、UV-B、UV-Cに分類されます。

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 この分類で、波長の短いUV-Cと、UV-Bの短波長側の一部の紫外線はエネルギーが高く危険です。この範囲の紫外線は皮膚の細胞組織を破壊し、免疫力低下、白内障、皮膚ガンなどを引き起こし、人体に悪影響を与えます。しかしながら、これらの紫外線は大気中のオゾン層で吸収されるため地表には届きません。ですから、日常生活では心配する必要はありません。地表に届いて日焼けの原因となる紫外線はUV-AとUV-Bの長波長側の紫外線です。

■日焼けが生じるしくみ 

 UV-Aは皮膚の奥まで届き、メラノサイト(色素細胞)を刺激します。メラノサイトにはチロシンというアミノ酸が存在します。これは日焼けのもととなるメラニンの原料です。紫外線でメラノサイトの活動が活発になると、チロシンに酸化酵素のチロシナーゼが働いてドーパという物質ができます。チロシナーゼはさらにドーパに働いて、ドーパキノンという物質を作ります。ドーパキノンは反応性が高く、いくつかの物質を経て複雑な構造を持つ褐色のメラニンとなります。

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 日焼けすると肌の色が黒くなるのはメラニンが増えるからです。メラニン色素は紫外線を吸収し、紫外線が皮膚にダメージを与えるのを防ぎます。ですから、紫外線量に対してメラニン色素が適度に生成されているうちは肌が黒くなるだけで、これは健康的な日焼け(サンタン)です。しかし、UV-Aは皮膚の深部組織に影響を与えるため、色素沈着やしわやたるみなどを引き起こします。 

 UV-Bの長波長側の紫外線は皮膚の奥まで届きUV-Aと同じ作用をしますが、そのほとんどは皮膚の表面に近いところまでしか届きません。日焼けによって皮膚が赤くなったり、腫れたり、水ぶくれができるのはUV-Aよりエネルギーが高いUV-Bによるもので、これは病的な日焼け(サンバーン)です。また、UV-Bは皮膚ガンを引き起こすことも知られています。

■日焼け止めクリームのしくみ

 日焼けを避けるには衣服、帽子、日傘などで紫外線を皮膚から物理的に遮断するのが最も良い方法です。しかし、顔や腕を紫外線から完全に遮断するのは困難です。また、海水浴の時は衣服を着ていませんから紫外線に対して無防備になります。このような場合には日焼け止めクリーム(UVカットクリーム)などを使うと良いでしょう。

 日焼け止めクリームには紫外線防止剤が含まれています。紫外線防止剤には、金属酸化物などの微粒子で紫外線を物理的に遮断する紫外線散乱剤と、紫外線を吸収して熱などのエネルギーとして放出する紫外線吸収剤があります。

 紫外線散乱剤には二酸化チタン、酸化亜鉛などの化合物が使われます。これらの微粒子を皮膚に塗ると、紫外線が皮膚に届く前に散乱・反射されるので、皮膚を紫外線から守ることができます。

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 紫外線吸収剤には多くの化合物が使われていますが、代表的なものとしてはオキシベンゾンやメトキシケイヒ酸オクチルなどです。これらの化合物はその構造中にベンゼン環や二重結合を持っており、紫外線をよく吸収します。4

 これらの化合物が紫外線を吸収すると、分子中の電子状態がエネルギーの低い安定した基底状態からエネルギーの高い不安定な励起状態になります。電子状態はすぐに不安定な励起状態から安定した基底状態に戻りますが、このときに差分のエネルギーを熱エネルギーとして放出します。この繰り返しで紫外線から皮膚を守ります。

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 化合物によって吸収する紫外線の波長領域が異なるため、紫外線吸収剤には複数の化合物が配合されています。使用しているうちに化合物そのものが化学変化を起こして、かゆみや肌荒れを起こす場合もあるので、肌が弱い人は注意が必要です。

■紫外線防止剤の効果を示すSPFやPAとは

 紫外線防止剤の効果はSPF(Sun Protection Factor)やPA(Protection Grade of UV-A)という数値で表されます。SPFは主にUV-Bによるサンバーンを防ぐ効果を示す数値で、紫外線で皮膚に赤い斑点が現れるまでの時間を何倍に長くできるかを表したものです。例えば、SPF15の日焼け止めクリームは紫外線で赤い斑点ができるまでに20分かかる人では、20×15=300分、すなわち5時間日焼け止めの効果を得られるということです。

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 PAは皮膚の黒化をSPFと同じ方法で測定したPFA(Sun Protection Factor of UV-A)という数値から求められます。日本化粧品工業連合会では下記の3段階に定めています。

PA+ PFA2以上4未満・UV-A防御効果がある
PA++ PFA4以上8未満・UV-A防御効果がかなりある
PA+++ PFA8以上・UV-A防御効果が非常にある

 SPFやPAが高いということは紫外線防止効果が高いということですが、その分だけ皮膚への負担が大きくなります。日常の生活で使う日焼け止めは数値が低いものを選び、数値が高いものは海水浴、レジャー、屋外でスポーツをするときなどに使うようにすると良いでしよう。日本化粧品工業連合会のサイトにPAとSPFによる紫外線防止用化粧品の選び方の解説がありますので参考にすると良いでしょう。

「日やけ止め化粧品」の選び方
http://www.jcia.org/consumer/spf_main.htm

■日焼けクリームとは

 日焼けクリームは紫外線の悪影響を避けてわざと日焼けをするためのものと、日光に浴びずに皮膚が日焼けしたような色にするものがあります。

前者は紫外線の悪影響を避けるためのものですから、これは日焼け止めクリームのことです。日焼けをするのが目的ですから、サンバーンの原因となるUV-Bを選択的にカットするように作られており、UV-Aによるサンタンで体を焼いていくことができます。

後者はサンレスタンニングと呼ばれ、薬品で皮膚の角質層のタンパク質を変質させて皮膚の色を日焼けしたような黒い色にするものです。メラニン色素の少ない白人が多い欧米では、肌を黒くするために日光浴をしたり、日焼けサロンを利用したりすることは皮膚に障害を与えるので好ましくありません。そこで、紫外線を使うことなく肌を黒くすることができる薬品が使われるようになりました。代表的なサンレスタンニング剤はグリセリンから作られるジヒドロキシアセトンという単糖です。

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 ジヒドロキシアセトンを皮膚に塗ると、角質層のタンパク質をつくるアミノ酸と反応し、タンパク質が変質します。この変質したタンパク質が黄色や茶色になります。着色した皮膚は洗ったり、こすったりしても色は落ちませんが、数日から1週間ほどで肌の色が元に戻ります。ジヒドロキシアセトン自身は無害であり、紫外線による日焼けで生じるダメージを皮膚に与えることなく皮膚の色を日焼けしたような色にすることができます。

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